パイント君です。
前回の『ポール・ウェラーのカバー曲』から、随分と月日が経ってしまいました汗
今回は彼もリスペクトしているイギリスの大御所バンド、
The Who(ザ・フー)
の5枚目のアルバム
『Who’s Next(フーズ・ネクスト)』(1971)
を取り上げたいと思いますっ!
タイトルは、「お次は誰?」という意味をかけたダジャレですね。
フーの最高傑作(だと思う)
いやこれ、マジで傑作です。当時のライバルとされる、レッド・ツェッペリンのどのアルバムより優れていると思う。
全体的には「ハードロック」と呼んで差し支えないのですが。
そうした枠にとらわれない、スケールの大きさを感じるんですよね!
まずは恒例、ジャケットから愛でるとしましょう。
…立ちションだ。
特にスッキリした感じでもない4人のメンバーは、左から
ジョン・エントウィッスル(John Entwistle):ベース(故人)、たまに楽曲を提供
ピート・タウンゼンド(Pete Townsend):ギター、楽曲の9割以上を作詞作曲
キース・ムーン(Keith Moon):ドラム(故人)、破天荒
ロジャー・ダルトリー(Roger Daltrey):ボーカル、グループの創始者
被害に遭った(苦笑)コンクリートの塊が、
スタンリー・キューブリック監督の↓『2001年宇宙の旅』に出てくるモノリスを想起させます。
ギグの帰りにイングランド北東部のダーラム(Durham)近郊を車で走っていたら、偶然見かけたものだそうです。
こりゃモノリスっぽくっていいわ〜ってことで、カメラマンはピートが立ちションする写真を取ることに。
他の3人の分は水をかけただけで、実際には立ちションしてないらしいですが(苦笑)。
何しろ、既にいくつかのジャケット案が却下されていたようなので、これに決まってよかったですね。
さてさて。
一体なぜ、このアルバムが傑作と呼ばれているのか?
楽曲の水準が恐ろしく高い
当時25〜26歳のピートは、創作力がピークに達していたようです。まさに捨て曲なし!
ロジャーは全てのピートの曲の中で、
『ビハインド・ブルー・アイズ(Behind Blue Eyes)』
が一番好きだと言ってます。
また、当時の最新機材であるシンセサイザーとシーケンサーが曲にバッチリとハマってますね。
↓まるでスティーヴ・ライヒ(Steve Reich)!
それもそのはず。
1曲目の
『ババ・オライリィ(Baba O’Riley)』
の曲名は、ライヒと並ぶミニマルミュージックの大御所
テリー・ライリー(Terry Riley)
から半分取られてるんですから。
最後の曲
『無法の世界(Won’t Get Fooled Again)』
は、ライブのクライマックスで必ずやる曲です。
これもピートのシンセサイザーが大活躍してます。
それから、ジョンが唯一提供した
『マイ・ワイフ(My Wife)』
も人気曲です。
彼の曲の中では、一番キャッチーかも。
メンバー個々の演奏能力が高い
いつもそうですが、ロジャーを除く3人だけ(+シンセ)で演奏しているとはとても思えない分厚い音。ジョンの超絶リードベースは絶好調だし、
手数の多いいキースは、いつになくまとまったプレイを聞かせてくれます。
ピートは得意のカッティング以外にも、サザンロックばりのいなたいギターを披露してますよ〜。
そして何よりも、ロジャーのボーカル!
元々この人は声量がものすごいんですが、デビューアルバム以外は割とチマチマ歌ってたんですよね。
しかし、ロック・オペラの『トミー(Tommy)』やウッドストック・フェスティバルで表現力を鍛えられたのか?
『Who’s Next』ではブレークスルーを感じます。
レコーディング技術が高い
当時の技術としては、とてつもなくクリアな音で録音されてます。これは、エンジニアのグリン・ジョンズ(Glyn Johns)を共同プロデューサーに迎えたことが大きいみたいですね。
↑このメイキングDVDにはグリンも登場し、興味深い話を聞かせてくれますよ!
全ロックファン必見です!
ちなみに彼は。
ビートルズの「ゲット・バック・セッション」を押し付けられて、
結局はフィル・スペクター版の「レット・イット・ビー」に差し替えられた苦い経験を持つ人。
元々は妥協の産物
そもそも『Who’s Next』は、お蔵入りになった『ライフハウス(Lifehouse)』
という2枚組のロック・オペラ作品を、1枚のアルバムにまとめ直したもの。
(残りの楽曲は↓『オッズ&ソッズ(Odds & Sods)』やピートのソロアルバムに収録された)
このライフハウスってのが非常に難解で。
メンバーやマネージャーの理解を得られなかっただけでなく、ピート本人も収拾がつかなくなると思ったんでしょうなあ。
フーのアルバムって、なんか小難しいのが多いですよね?
全キャリアを通じたポップさや、ラウドな演奏・楽器破壊に代表される危うさとは裏腹というか。
それはピートのせいです。
彼はいつもコンセプトありきだから、間違いなくめんどくさい奴だわ(苦笑)。
もちろん、創作面の原動力であるピートがいなければフーは成立しないんだけど。
ライフハウスが行き詰まったのであれば、それは捨て去って本当に正解!
ちなみに、一から製作し直すことを進言したのはグリンだとか。
ありがとうグリン!
イギリスで唯一のナンバーワン
年上のアメリカ人の友人は、このアルバムにすごく思い入れがあるそうです。大学生のときにキャンパスを歩いていたら、どこからともなく『ババ・オライリィ』が大音量で流れてきたと。
学生か誰かが、手に入れたばかりのレコードを教室でかけたんでしょうね。
そのときの衝撃が、今でも忘れられないと言ってました。
このエピソードが示すように、フーというバンドは欧米で非常に人気があります。
そのネームバリューに比べて、チャートアクションはやや寂しいですが。
この『Who’s Next』は、イギリスで唯一の1位を獲得。
ビルボードでは4位を記録しました。
いやー、めでたい。
CSIのテーマ曲に
アメリカのTVドラマ好きの方は、『CSI:科学捜査班』
をご存知ですよね?
テーマ曲に選ばれたのが、フーの1978年のアルバム
↑『フー・アー・ユー(Who Are You)』
の表題曲
『Who Are You』
です!
ドラマに非常にマッチしてますね。
そしてここからが本題。
スピンオフ番組である
↑『CSI:マイアミ』と
↑『CSI:ニューヨーク』
のテーマ曲には、
『Who’s Next』からそれぞれ
『無法の世界』と『ババ・オライリー』
が採用されているのですっ!
偉いぞプロデューサー!
…これだけではありません。
2015〜16年に放映された
↑『CSI:サイバー』
では、
↑『ザ・フー・セル・アウト(The Who Sell Out)』(1967)
に収録されたフー最大のヒットシングル
『恋のマジック・アイ(I Can See for Miles)』
がテーマ曲となっているんです。
つまり、CSI4作のテーマ曲は、全てフーの曲ということになります。
しかも、CSIにはロジャー自身が俳優として出演した回があります。
『CSI:科学捜査班』シーズン7の
第9話「レジェンド・オブ・ベガス」
でございます。
興味のある方は、是非ご覧になって下さい。
…ということで。
ロック史に燦然と輝く名盤
『Who’s Next』
の色褪せない素晴らしさ、存在感の大きさについて、駆け足でご紹介しました。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!