皆さんこんにちは!

 
いや〜いい感じで寒いっすね。

でも日中は10度超えてるし、そうでもないか。

気温は東京の方が低いみたいだし。

 
さて今回は。

2018年に再結成の報道が出たっきりの大御所ブリティッシュ・ロックバンド、

ザ・キンクス(The Kinks)
による5枚目のスタジオアルバム

 
『サムシング・エルス(Something Else by The Kinks)』(1967)
を取り上げたいと思います!

 
キンクスと言えば、前回ご紹介したザ・フーよりデビューが少し早く。

メインソングライターであるリーダーのレイ・デイヴィス(Ray Davies)は、

フーのメジャーデビュー曲

アイ・キャント・エクスプレイン(I Can’t Explain)

の切れ味鋭いイントロを聞いたとき、自分らのサウンドにそっくりだと思ったそうな。

 
そりゃそうだ。

プロデューサーが同じシェル・タルミー(Shel Talmy)だもん。

キンクスがパワーポップ路線で売れたので、フーで二匹目のドジョウを狙ったのかも。

 
こうした事情のせいか。

レイの口からフーのメインソングライターであるピート・タウンゼンド(Pete Townsend)を褒める言葉を聞いたことはありません(苦笑)。

ピートの方は、明らかにレイをリスペクトしてますがね。

時代はサイケ

それはさておき。

『サムシング・エルス』は1967年9月15日の発売。

 
当時はまさにサイケデリック・ロック(Psychedelic Rock)の時代で、この前後には
 
 
ビートルズが『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band)』(1967年5月26日)と

『マジカル・ミステリー・ツアー(Magical Mystery Tour)』(イギリスEP盤は1967年12月8日、写真は今や“正規”のアメリカ版)

 
 
ローリング・ストーンズが『サタニック・マジェスティーズ(Their Satanic Majesties Request)』(1967年12月8日)

 
 
フーが『セル・アウト(The Who Sell Out)』(1967年12月15日)

といったサイケ色の強いアルバムを出しています。

 
 
 
↑キンクスは前作の『Fece to Face』(1966年10月28日)をコンセプトアルバムにするはずだったらしく。

曲と曲の間に効果音を入れようとするも、パイ・レコード(Pye Records)が却下。

レイは曲間が架空のCMで繋がったフーの『セル・アウト』を聞いたとき、地団駄を踏んで悔しがったでしょうなあ。

そして、ビートルズの『サージェント』が世界中で爆発的に売れ続けるのを横目で眺める…。

 
そんなフラストレーションが溜まりそうな時期に出された『サムシング・エルス』。

チャートアクションは

イギリスが35位、ビルボードが153位
 
と、これまでで最低。

こりゃひどい。

 
先行シングル2枚(後述)が大ヒットしたのと、

パイが2ヶ月後に傘下レーベルから

 
『サニー・アフタヌーン(Sunny Afternoon)』
という廉価ベスト盤を出して、こっちの方が売れちゃった(9位)という事情もあります。

 
この辺りは、レコード業界のシビアな現実を物語っています。

何だかんだ言って、キンクスってビートルズとストーンズの次に売れてたのに、この扱いですからね。

2枚の先行シングル

それでは、肝心の中身に移りましょうか。

 
間違いなく傑作です!

個人的には、キンクスの全アルバムの中で最高峰だと思います。

統一感はないけど、何と言っても曲が粒ぞろい。

 
破天荒なレイの弟、デイヴ・デイヴィス(Dave Davies)

3曲提供(1曲はレイとの共作)しているのも目を引きます。

 
A1 David Watts
A2 Death Of A Clown(共作)
A3 Two Sister
A4 No Return
A5 Harry Rag
A6 Tin Soldier Man
A7 Situation Vacant
B1 Love Me Till The Sun Shines(デイヴ作)
B2 Lazy Old Sun
B3 Afternoon Tea
B4 Funny Face(デイヴ作)
B5 End Of The Season
B6 Waterloo Sunset
 
全体的には、1年前に出たビートルズのリボルバー(Revolver)にも似た味わいですが。

サイケ色はさほど強くありません。

 
タルミーが関与した最後の作品で、レイは部分的にプロデューサー権限を与えられたものの。

経験が足りなかったんでしょうか、何となく中途半端な仕上がりになっています(あくまでパイント君の印象)。

完全にスタジオを掌握するのは、念願のコンセプトアルバムとして結実した次作の『ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ(The Kinks Are the Village Green Preservation Society)』からです。↓

 
 
 
それから、レイの当時の奥さんのコーラスが入ってるのが特徴です。

(子供の頃は、えらく高音が出せるグループだなと思ってました)

 
ロックファンにお馴染みの鍵盤奏者、ニッキー・ホプキンス(Nicky Hopkins)も安定の貢献。

彼とは3枚目のキンク・コントラヴァーシー(The Kink Kontroversy)(1965)からの付き合いで、今回も彼のピアノとキーボードがなければ成り立ちません。

 
で、先行シングルとして発売された問題の2枚とは、

下線を引いた
「ウォータールー・サンセット(Waterloo Sunset)」

「道化師の死(Death of a Clown)」のこと。

「夜明けまで愛して(Love Me Till The Sun Shines)」は「道化師の死」のB面)

 
まず、アルバムより4ヶ月も前(苦笑)の 1967年5月5日にリリースされた「ウォータールー・サンセット」。

こいつがロック史に燦然と輝く名曲中の名曲で、イギリスでは最高2位を記録しました。

 
ウォータールー駅の北側にウォータールー橋があり。

歩いて渡るたびに、この曲が頭の中で流れてきます。

夕方はまさに“Waterloo sunset’s fine”ですね(一番上の写真がそれです)。

 
お次の「道化師の死」は、デイヴのソロという位置付け。

1967年7月7日の発売で、イギリスでは 3位に到達しました。

 
この日には実は、超有名な曲もリリースされてるんですよ。

それは、ビートルズの「愛こそはすべて(All You Need Is Love)」。

こちらはもちろん、定位置の1位となりましたが、デイヴもよく健闘したね!

 
何しろ、かなり前に売れたこれら2枚の強力シングルを入れたせいで。

(故に“シングルカット”とは言えない)

ファンの間で、アルバムの購入意欲が失せたのは間違いないでしょう。

他の曲もレベル高し

気を取り直して、今度は他の曲を見てみましょう。

 
まずA面1発目の「デヴィッド・ワッツ(David Watts)」

ジャムのカバーでもお馴染みのこの曲。

冒頭のおしゃべりとカウントがビートルズの「タックスマン(Taxman)」そっくりで、

逆回転のギミックもリボルバーっぽい。

歌詞は自虐オンリーで、得意の皮肉もなく。

非常に素直に楽しめる、軽快なビートナンバーとなっております。

 
「ふたりの姉妹 (Two Sisters)」は、ハープシコードを全面的にフィーチャー。

おまけにストリングスまで入ってます。

金かかってそー!

次作の『ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ』収録曲で、日本でシングルカットされた「ヴィレッジ・グリーン(Village Green)」もハープシコードが主役。

どうやらこの2曲は、同じ時期に作られたらしいですね。

ちなみにハープシコードは、レイが弾いてるようです。

 
「ノー・リターン(No Return)」はサイケボサノバ?とでも言おうか。

「ハリー・ラグ(Harry Rag)」はパブで合唱できそうなボードビル調の曲。

歌詞については、ピーター・バラカンさんに聞いて下さい(笑)。

 
次は飛ばして、「シチュエイション・ヴェイカント(Situation Vacant)」

これ好き。正統派キンキーサウンドにニッキーのファンキーなキーボードが絡み、

義母に翻弄される男に関する変な歌詞が乗る。

 
「レイジー・オールド・サン(Lazy Old Sun)」はアルバム中、最もサイケ色が強いかな。

ビートルズの「アイム・オンリー・スリーピング(I’m Only Sleeping)」の影響を色濃く感じる。

レイは確か、リボルバーの中ではこの曲を一番気に入ってたはずだし。

 
「エンド・オブ・ザ・シーズン(End of the Season)」は、

リボルバーだと「グッド・デイ・サンシャイン(Good Day Sunshine)」に相当するかも。

レイはこの曲がリボルバーで2番目にいいと言ってたので(笑)。

 
「アフタヌーン・ティ(Afternoon Tea)」
 
は評論家風に言えば、イギリス庶民の生活を温かい目線で描いたいかにもキンクスらしい曲。

アメリカン・ロック路線に方向転換してかの地で売れるまでは、こういうほのぼの系の作風が目立ちます。

 
以上、収録曲をサラッとご紹介しましたー

念願の生レイ

ところで、パイント君はキンクスを生で見たことがありません。

1982年の初来日のときは、まだ子供だったし。

 
で、ロンドンに渡った頃は活動休止状態で。

2004年のソロコンサートで、ようやく生レイを体験しました。

 
これが背の高い普通のオッサン!

司会者が出てきたと思ったわ(笑)。

 
でも、やっぱり感動しましたよ。

実際の声も、レコードと同じく弱々しいのですが。

決して小さいワケではないんです。

 
要はヘタってことか(苦笑)。

でも、彼以外が歌う「ウォータールー・サンセット」なんて興味ないし。

キンクスって、強力なボーカリストが一人もいないのに売れた稀有なバンドですよね。

 
ところで、再結成話はどうなったのでしょうか。

ローリング・ストーン誌によると、10月時点で彼らは曲作りに専念してるとのこと。

新アルバムを出せば、恐らくコンサートツアーに出ると思うので。

気長に待つとしますか!

おまけ:「サー」の称号を持つロックスター

ところでレイ・デイヴィスは2017年に、イギリス政府からナイトの爵位を授かりました。

なので、正式な呼び名は「サー・レイモンド・ダグラス・デイヴィス(Sir Raymond Douglas Davies)」。

 
せっかくですから、これまでにナイトを授与されたロックスターをご紹介しますね。

 
バリー・ギブ Sir Barry Alan Crompton Gibb(2018)

リンゴ・スター Sir Richard Starkey(2018)

ロッド・スチュワート Sir Roderick David Stewart(2016)

ヴァン・モリソン Sir George Ivan Morrison(2016)

ボノ Bono(2007)*イギリス人ではないので「サー」の称号は付かない

ミック・ジャガー Sir Michael Philip Jagger(2003)

ラヴィ・シャンカール Ravi Shankar(2001)*イギリス人ではないので「サー」の称号は付かない

エルトン・ジョン Sir Elton Hercules John(1998)

ポール・マッカートニー Sir James Paul McCartney(1997)

ジョージ・マーティン Sir George Henry Martin(1996)

ボブ・ゲルドフ Bob Geldof(1986)*イギリス人ではないので「サー」の称号は付かない

 
逮捕歴があろうが、王室批判をした過去があろうが。

どっかの国と違って、懐の深さを感じますね。

 
 
…それでは今回はここまで。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 
海外移住、脱サラ、フリーランスを目指している方、洋楽ファンをはじめ、皆さんのお役に立てば幸いです。